小さいこどもは注射の痛みをうまく周囲に伝えることができないため、泣いて嫌がっている場合でも、「注射が終わればケロリと忘れるはず」「慣れればそのうち怖がらなくなる」と考えられがちです。でも、こどものときの痛み体験が恐怖や不安の記憶としてのこり、注射手技に対して過剰な恐怖感や不安感が芽生えて注射拒否につながることがあります。
小さいころに医療行為などによりなんども痛みを経験したこどもは、その後、「痛み閾値(いきち)」が下がる場合があることが知られています。「痛み閾値」とは「痛い」とかんじるもっとも弱いレベルのことで、これが下がることによって痛みを本来のものより強く感じてしまう、つまり「痛がり」になってしまうのです。この閾値の変化のしかたは経験した痛みの種類や状況によって違ってきますが、手術や注射など医療行為の場合でも、痛みを感知するセンサー(自由神経終末)、脊髄、脳の働きが変化して、こどもは痛みに対してより強い反応を示すようになると考えられています。